こんにちは、山本です。
いきなりですが、「信念」と聞くと、どこかポジティブな響きを感じますよね。
信念を貫く、自分の信念に沿って生きる——まるで“生き様”そのものを表すような言葉。
改めて辞書をひいてみると、そこにはこんな風に書かれていました。
ある事柄について揺らぐことのない考え、確信をもつこと
ただ、僕はまったく逆のイメージを持っています。
「信念を貫く」ということは、実は“本当に実現したい未来”から、最も遠ざかる行為かもしれない。
今回は、そんな“信念”の意外な正体について考えてみたいと思います。
思い込み
高校を中退したあと、地元の造船会社に勤めていました。
かなり過酷な環境でした。
いや、正直「よくあれで続いてたな」と今でも思います。
夏場は40度を超える作業現場。
繁忙期には、月100時間近い残業が当たり前。
そんな状況だから、当然ながら人の出入りも激しくて。
何人見送ったか、もう覚えていないくらいです。
それでも僕は、入社して1年ほど経った頃には主力の工程を任されるようになっていて。
仕事にやりがいも感じていたし、「ちゃんと評価されているんだな」と思えていました。
ただ、その工程を担当していたのは、いつの間にか僕ひとりだけになっていて、どう考えても負担が大きすぎるのに、誰も補充される気配はありませんでした。
「もうひとりいれば、だいぶ楽になるのにな…」
そんなことをぼんやり思いながらも、僕はそのまま業務を回し続けていました。
大手企業みたいに人がどんどん応募してくるわけでもないし、最低限の人員でなんとか回す。
それが“当たり前”の空気でした。
でも、少しずつフラストレーションが溜まっていきました。
「なぜ、この会社はこんなに劣悪なんだ」
「他の会社は、もっと1人1人の負担を減らす仕組みがあるのに」
「こんな状態で働かせ続けるなんて、会社として終わってるだろ」
——そうして、いつの間にか僕の中には、
“会社はこうあるべきだ”という思い込みが根を張っていたんです。
次に起きること
“会社はこうあるべきだ”という思い込みが生まれたあと、次に起こることは、大きく2つあると思っています。
ひとつは、会社に改善を求めること。
「人を増やしてほしい」と、正当に訴える道。
もうひとつは、自分が環境を変えること。
つまり、転職などで抜け出す選択。
でも——
僕が取ったのは、そのどちらでもありませんでした。
僕は“思い込み”を握りしめたまま、会社の批判を始めたんです。
「人を採用しない会社が悪い」
「だから現場はいつも回らない」
「俺ばっかり損してるじゃないか」
そんなふうに、自分勝手な主張ばかりを繰り返していました。
言い換えれば、
「会社は従業員の“働きやすい環境”をつくるべきだ!」という“信念”を叫んでいたんです。
改めて、“信念”という言葉の定義を振り返ってみると——
ある事柄について揺らぐことのない考え、確信をもつこと
まさに、僕の状態そのものでした。
その信念を正義として掲げていた間、僕の頭の中はこうでした。
「自分だけがしんどい」
「なんで誰も気づいてくれないんだ」
「これは会社のせいだ」
視点は、完全に“自分”しか見ていない。
脳内で、ずっと同じ音楽がリピート再生されてるみたいな感覚。
一度ハマると、それ以外の考えが入ってこない。まるで、小さな洗脳みたいに。
僕が本当に実現したかった事
今思えば、
僕が本当にしたかったのは、建設的な対話だったんです。
ただ、自分の状況を正直に伝えて、
会社として何を優先するのか(納期なのか、品質なのか)を一緒に考えて、
そのうえで折り合いをつける。
それだけのことでした。
でも当時の僕には、
それが“信念”だなんて感覚はまったくなかったし、
そもそも——
「自分が本当はどうしたいのか」なんて、考えたこともなかったんです。
ただただ、悲鳴を上げるように叫ぶしかなかった。
10代そこそこのガキが、どうにもならない現実に、必死に食らいついていただけだったように思います。
信念とは「自己実現」から1番遠い場所に存在している
もちろん、「信念」という言葉の定義を断定するつもりはありません。
「信念は信念だ」と思う人がいても、それはそれでいいと思っています。
僕がここで伝えたかったのは、
『〇〇とは〜である“べき”だ』と強く思い込んだときこそ、一度立ち止まってみてほしいということです。
——本当にそうだろうか?
——反対の視点から見てみたら、どうだろう?
たとえば、
「会社とは従業員の働きやすさを考えるべきだ」という言葉も、
いったん反転させてみる。
「会社とは、従業員の働きやすさを考える“べきではない”」——。
そんなふうに、意図的に真逆から見てみることで、思考の“詰まり”がふっとほどけることもあるんです。
このあたりの“反転の思考術”については、またどこかで掘り下げてみようと思います。
では、また次回お会いしましょう。